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【施工事例紹介】築60年の木造二階建てを、暮らしやすい平屋へ ― 減築と断熱・耐震のフルリノベーション
今回ご紹介するのは、築約60年の木造二階建て住宅を、耐震性と断熱性を大幅に向上させた平屋住宅へと改修した事例です。
■ 減築の背景と暮らしのご要望
長年にわたり増改築を繰り返してきた建物は、動線や間取りに使い勝手の悪さが残り、冬場はお風呂やトイレが外気の影響を受けやすく、居住者にとっては負担の大きい住まいとなっていました。
そこで今回、二階を撤去し、平屋への減築と同時に、耐震補強と断熱性能の向上を図ることで、安心で快適な住まいづくりをご提案しました。














■ 耐震補強と基礎の工夫
既存建物は大谷石や無筋コンクリートの基礎で構成されており、耐震性には大きな不安がありました。
当初予定していた基礎補強案にはコストや施工上の懸念があったため、既存構造材を活かしつつ、独自の補強工法を採用し、大幅な耐震性向上を実現しています。
既存柱には新たな柱を「そわせる」ように補強し、構造金物も新築同様の仕様を採用。
また、外周部および内部の主要な壁には、土台から梁まで一枚で届く構造用合板を貼り、水平耐力を確保しています。















■ 断熱性能の大幅な向上
国と東京都の補助制度を活用し、
• 全サッシ・玄関ドアの高性能断熱仕様化(ペアガラス・トリプルガラス)
• 天井・壁・床への高性能断熱材の充填
を行いました。
これにより、冬は暖かく夏は涼しい、室温の安定した室内環境が実現しました。








ウッドデッキに面した大開口サッシは窓からの熱負荷に配慮してトリプルガラスとしました。

道路に面している部屋はハイサイドライト(高窓)とし、高い位置から自然光を取り込み部屋全体が明るくなるようにしました。また同時に外部からのプライバシーにも配慮してます。
■ 暮らしに寄り添う居間と水まわりの工夫
居間には、ウッドデッキに面した畳のスペースを設けました。
こちらはご主人のご希望によるもので、庭の緑を眺めながらくつろげる、落ち着きのある心地よい空間となっています。
また、奥様からは日中に趣味や作業ができるワークスペースをご希望いただきました。
そこで居間の一角に、造り付けのデスクと本棚を設置。生活の中心に程よく溶け込む、使い勝手の良いスペースが生まれました。
キッチンには、収納力の高いカップボードを設置し、さらに食品や日用品のストックに便利なパントリーも併設。
家事動線を意識した設計により、調理・収納・片付けがスムーズに行える快適なキッチン空間となっています。























■ 自然とつながる居間とウッドデッキ
居間には奥行きのあるウッドデッキを設け、庭とのつながりを持たせました。風が心地よく通り抜け、自然光がリビングの奥まで届く、開放感ある明るい空間となっています。
■ 庭と外構の再構築
敷地には都内では貴重な庭がありましたが、過剰な樹木によって日差しが遮られていました。
思い切って約8割の木々を伐採し、庭にはコンクリート土間と土のエリアをバランスよく残しました。
また、道路に面した塀は高さを確保することで、周囲の視線を遮りつつ、落ち着いたプライベート空間を確保しています。

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◆ 総評
増築を重ねた歴史ある住まいに、現代の性能と暮らしやすさを丁寧に重ねた今回の改修。
「大がかりな改修だけど、建て替えとは違う価値」が、ここにはあります。
ご夫婦が、安心して長く快適に住み続けられるよう、暮らし目線と性能向上の両立を目指しました。
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